公的介護保険制度とはどんなもの?
公的介護保険制度は市区町村が運営主体となって、介護を社会全体で支える仕組みとして、公的介護保険が2000年にスタートしました。
原則40歳以上の方を被保険者とした社会保障制度です。
「介護が必要」と市区町村に認定されたとき、費用の一部を支払ってサービスを利用することができます。
〇 現物給付のサービス
介護保険は利用者に対して介護サービスという「現物」を給付する方式です(現物給付)。
利用者は介護サービス費用の1割を負担します。残りの9割は運営している市区町村が事業者に支払います。
介護サービス利用時に費用を1割負担
〇 介護給付を受けらられる人
〇40歳~64歳の第2号被保険者が給付を受けられる16種類の「特定疾病」とは
● がん(末期) ● 骨折を伴う骨粗鬆症
● 脊柱管狭窄症 ● 関節リウマチ
● 初老期における認知症 ● 早老症
● 筋萎縮性側索硬化症 ● パーキンソン病関連疾患
● 多系統萎縮症 ● 後縦靭帯骨化症
● 脊髄小脳変性症 ● 脳血管疾患
● 閉塞性動脈硬化症 ● 慢性閉塞性肺疾患
● 糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
● 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
以上の特定疾病が原因で要介護状態や要支援状態になった場合にサービスが受けられます。
事故等のケガによって介護が必要になっても、第2号保険者の場合にはサービスを受けることはできません。
〇 介護保険制度で受けられるサービス
公的介護保険
要支援1~要支援2の人 | 要介護1~要介護5の人 |
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介護予防サービス ●訪問を受けて、家庭で利用するサービス ●施設に通所して利用するサービス ●施設に短期間入所して利用するサービス ●福祉用具の購入や住宅改修 ●その他サービス | 介護サービス ●訪問を受けて、家庭で利用するサービス ●施設に通所して利用するサービス ●施設に入所して利用するサービス ●福祉用具の購入や住宅改修 ●その他サービス |
〇 要介護(要支援)認定の区分と在宅サービスの支給限度額
介護の度合に応じて「要支援1~要支援2」「要介護1~要介護5」の7段階に分かれています。
区 分 | 認定の目安 | 1か月の 支給限度額 | 1か月の支給限度額まで 利用した場合の自己負担額(1割負担の場合) |
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要支援 1 | 要介護状態とは認められないが、社会的支援を必要とする状態 食事や排泄などはほとんどひとりでできるが、立ち上がりや片足での立位保持などの動作に何らかの支えを必要とすることがある。 入浴や掃除など、日常生活の一部の見守りや助けが必要な場合がある。 | 50,030円 | 5,003円 |
要支援 2 | 生活の一部について部分的に介護を必要とする状態 食事や排泄はほとんどひとりでできるが、ときどき介助が必要な場合がある。立ち上がりや歩行などに不安定さがみられることが多い。問題行動や理解の低下が見られることがある。 この状態に該当する人のうち、適切な介護予防サービスの利用により、状態の維持や、改善が見込まれる人については要支援2と認定される。 | 104,730円 | 10,473円 |
要介護 1 | 166,920円 | 16,692円 |
|
要介護 2 | 軽度の介護を必要とする状態 食事や排泄に何らかの介助を必要とすることがある。立ち上がりや片足での立位保持、歩行などに何らかの支えが必要。衣服の着脱はなんとかできる。物忘れや直前の行動の理解の一部に低下がみられることがある。 | 196,160円 | 19,616円 |
要介護 3 | 中等度の介護を必要とする状態 食事や排泄に一部介助が必要。立ち上がりや片足での立位保持などがひとりでできない。入浴や衣服の着脱などに全面的な介護が必要。いくつかの問題行動や理解の低下がみられることがある。 | 269,310円 | 26,931円 |
要介護 4 | 重度の介護を必要とする状態 食事にときどき介助が必要で、排泄、入浴、衣服の着脱には全面的な介助が必要。立ち上がりや両足での立位保持はひとりではほとんどできない。多くの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある | 308,060円 | 30,806円 |
要介護 5 | 最重度の介護を必要とする状態 食事や排泄がひとりでできないなど、日常生活を遂行する能力は著しく低下している。歩行や両足での立位保持はほとんどできない。意思の伝達がほとんどできない場合が多い。 | 360,650円 | 36,065円 |
2016年10月現在 厚生労働省HPより
※支給限度額は標準的な地域の例です。大都市の場合、介護サービスの内容に応じて利用料が高くなると、支給限度額は上記よりも高くなります。
※支給限度額を超えた分は金額自己負担になります。また、施設における食費や居住費は公的介護保険の給付の対象にはなりません。
〇 在宅サービスを受けた場合の例
〇 施設サービスを受けた場合の例
護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の1か月の自己負担の目安
(要介護5の人が多床室を利用した場合)
施設サービス費の1割 | 約24,500円 |
居住費 | 約25,200円(840円/日) |
食費 | 約42,000円(1,380円/日) |
日常生活費 | 約10,000円(施設により設定されます。) |
合計 | 約101,700円 |
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(要介護5の人がユニット型個室を利用した場合)
施設サービス費の1割 | 約27,000円 |
居住費 | 約60,000円(1,970円/日) |
食費 | 約42,000円(1,380円/日) |
日常生活費 | 約10,000円(施設により設定されます。) |
合計 | 約139,000円 |
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〇 低所得者の方への支援
利用者負担が過重にならないよう、所得の低い方には下記の表のとおり、所得に応じた区分により次の措置が講じられています。
設定区分 | 対象者 |
第1段階 | 生活保護者等 世帯全員が市町村民税非課税で、老齢福祉年金受給者 |
第2段階 | 世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金収入額+合計所得額が80万円以下 |
第3段階 | 世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金収入額+合計所得額が80万円超 |
第4段階 | 市区町村民税課税世帯(第5段階に該当する場合を除く) |
第5段階 | その者の属する世帯内に課税所得145万円以上の被保険者がおり、かつ、世帯内の第1号被保険者の収入の合計額が520万円(世帯内の第1号被保険者が本人のみの場合は383万円)以上 |
特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)
介護保険施設入所者の人で、所得や資産等が一定以下の方に対して、負担限度額を超えた「居住費」と「食費」の負担額が介護保険から支給されます。
なお、特定入所者介護サービス費の利用には、負担限度額認定を受ける必要がありますので、市区町村に申請して下さい。
負担限度額は「所得段階」、「施設の種類」、「部屋のタイプ」によって異なります。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) 短期入所生活介護の場合(日額)
基準費用額(日額) | 負担限度額(日額) | ||||
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第1段階 | 第2段階 | 第3段階 | |||
食費 | 1,380円 | 300円 | 390円 | 650円 |
|
居住費 | ユニット型個室 | 1,970円 | 820円 | 820円 | 1,310円 |
ユニット型準個室 | 1,640円 | 490円 | 490円 | 1,310円 | |
従来型個室 | 1,150円 | 320円 | 420円 | 820円 | |
多床室 | 840円 | 0円 | 370円 | 370円 |
介護老人保健施設、介護療養型医療施設、短期入所療養介護の場合(日額)
基準費用額(日額) | 負担限度額(日額) | ||||
---|---|---|---|---|---|
第1段階 | 第2段階 | 第3段階 | |||
食費 | 1,380円 | 300円 | 390円 | 650円 | |
居住費 | ユニット型個室 | 1,970円 | 820円 | 820円 | 1,310円 |
ユニット型準個室 | 1,640円 | 490円 | 490円 | 1,310円 | |
従来型個室 | 1,640円 | 490円 | 490円 | 1,310円 | |
多床室 | 370円 | 0円 | 370円 | 370円 |
高額介護サービス費
月々の1割負担(福祉用具購入費等一部を除く)の世帯の合計額が所得に応じて区分された上限額を超えた場合、その超えた分が介護保険から支給されます。
支給を受けるには、市区町村に申請することが必要です。
設定区分 | 対象者 | |
---|---|---|
第1段階 | 生活保護者等 世帯全員が市町村民税非課税で、老齢福祉年金受給者 | 15,000円 |
第2段階 | 世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金収入額+合計所得金額が80万円以下 | 24,600円 |
第3段階 | 世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金収入額+合計所得金額が80万円超 | 24,600円 |
第4段階 | 市区町村民税課税世帯(第5段階に該当する場合を除く) | 37,200円 |
第5段階 | その者の属する世帯内に課税所得145万円以上の被保険者がおり、かつ、世帯内の第1号被保険者の収入の合計額が520万円(世帯内の第1号被保険者が本人のみの場合は383万円)以上 | 44,400円 |